マイクロコントローラ(マイコンボード)のPicoシリーズと、シングルボードコンピューターのZeroシリーズをご紹介します。
目次
Picoシリーズ
マイコンボード
カメラ以外の各種センサーモジュールからデータを取得するために使用します。
Pico

Pico H

Pico W

Pico W H

引用:Raspberry Piハードウェア - Raspberry Pi ドキュメンテーション

Pico Pico H Pico W Pico W H
引用:Picoシリーズマイクロコントローラ - Raspberry Pi ドキュメンテーション
ボードに接続端子のヘッダー ピンがついている場合、品名の語尾に「H」が付きます。
品名の語尾に「W」があるボードは、左側にあるシールド部分がCYW43439というWiFi/BTのSoC(IC)です。
更に左側には、ANT(アンテナ)がパターンで実装されています。
今回は、赤枠のPico W Hで開発を進めていきます。
これらの他に、第2世代のRaspberry Pi Pico 2と2 Wがあります。
ここでのご紹介は割愛します。
Pico W主な機能
マイコンブロック
- RP2040マイコンチップはイギリスのRaspberry Piによって設計されました
- デュアルコアArm Cortex M0+プロセッサ、最大133MHzで動作する柔軟なクロック
- 264KBのSRAM、2MBのオンボードフラッシュメモリ
- USB 1.1 (デバイスとホストをサポート)
- 低電力スリープ・モードと休止モード
- USB経由の大容量記憶装置を使用したドラッグアンドドロッププログラミング
- 26個の×多機能GPIOピン
- 2 × SPI、2 × I2C、2 × UART、3 × 12ビットADC、16 ×制御可能PWMチャネル
- 高精度のクロックとタイマをオンチップで実現
- 温度センサー
- 高速化された浮動小数点ライブラリをオンチップで搭載
- 8 × Programmable I/O (PIO) ステートマシン (カスタム周辺機器サポート用)
WiFiブロック
- ワイヤレス(802.11n)、シングルバンド(2.4 GHz)
- WPA3
- 最大 4 つのクライアントをサポートするソフト アクセス ポイント
- Bluetooth 5.2
- Bluetooth LE Central および Peripheral の役割のサポート
- Bluetooth Classic のサポート
Pico Wピン配置

Pico W 端子配置一覧
# | 名称 | UART | I²C | SPI | 特殊/電源・その他 |
---|---|---|---|---|---|
1 | GP0 | UART0 TX | I2C0 SDA | SPI0 RX | PWM0 A |
2 | GP1 | UART0 RX | I2C0 SCL | SPI0 CSn | PWM0 B |
3 | GND | – | – | – | グラウンド |
4 | GP2 | I2C1 SDA | SPI0 SCK | PWM1 A | |
5 | GP3 | I2C1 SCL | SPI0 TX | PWM1 B | |
6 | GP4 | UART1 TX | I2C0 SDA | SPI0 RX | PWM2 A |
7 | GP5 | UART1 RX | I2C0 SCL | SPI0 CSn | PWM2 B |
8 | GND | – | – | – | グラウンド |
9 | GP6 | I2C1 SDA | SPI0 SCK | PWM3 A | |
10 | GP7 | I2C1 SCL | SPI0 TX | PWM3 B | |
11 | GP8 | UART1 TX | I2C0 SDA | SPI1 RX | PWM4 A |
12 | GP9 | UART1 RX | I2C0 SCL | SPI1 CSn | PWM4 B |
13 | GND | – | – | – | グラウンド |
14 | GP10 | I2C1 SDA | SPI1 SCK | PWM5 A | |
15 | GP11 | I2C1 SCL | SPI1 TX | PWM5 B | |
16 | GP12 | UART0 TX | I2C0 SDA | SPI1 RX | PWM6 A |
17 | GP13 | UART0 RX | I2C0 SCL | SPI1 CSn | PWM6 B |
18 | GND | – | – | – | グラウンド |
19 | GP14 | I2C1 SDA | SPI1 SCK | PWM7 A | |
20 | GP15 | I2C1 SCL | SPI1 TX | PWM7 B | |
21 | GP16 | UART0 TX | I2C0 SDA | SPI0 RX | PWM0 A |
22 | GP17 | UART0 RX | I2C0 SCL | SPI0 CSn | PWM0 B |
23 | GND | – | – | – | グラウンド |
24 | GP18 | I2C1 SDA | SPI0 SCK | PWM1 A | |
25 | GP19 | I2C1 SCL | SPI0 TX | PWM1 B | |
26 | GP20 | I2C0 SDA | PWM2 A | ||
27 | GP21 | I2C0 SCL | PWM2 B | ||
28 | GND | – | – | – | グラウンド |
29 | GP22 | PWM3 A | |||
30 | RUN | – | – | – | リセット信号入力 |
31 | GP26/ADC0 | I2C1 SDA | ADC0(A0) | ||
32 | GP27/ADC1 | I2C1 SCL | ADC1(A1) | ||
33 | AGND | – | – | – | アナロググラウンド |
34 | GP28/ADC2 | ADC2(A2) | |||
35 | ADC_VREF | – | – | – | ADC基準電圧 |
36 | 3V3_OUT | – | – | – | 3.3V 出力(外部デバイス用) |
37 | 3V3_EN | – | – | – | 3.3V レギュレータ制御 |
38 | GND | – | – | – | グラウンド |
39 | VSYS | – | – | – | システム電源入力(最大 5.5V) |
40 | VBUS | – | – | – | USB 5V 電源入力 |
GPIOピン
GP0~GP28まで、29端子あります。
プログラムで端子の番号と用途やHI/LOの制御を設定して使用します。
電圧は、入出力ともに3.3Vまでです。
電源投入やリセット直後のGP0~GP28は、「入力モード」(Hi-Z)で、プルアップ/プルダウン抵抗は無効(None)pull=None
の状態ですべて汎用GPIO(入力モード・Hi-Z状態)に設定され、UART/I²Cなどの特定機能は割り当てられていません。
端子の使い方により、プログラムでプルアップします。
GP0~GP22まではデジタル端子です。
GP26~GP28は、アナログ端子のADCです。GP26,27はプログラムの設定により、デジタルGPIO、I2Cとしても使用可能です。
ADC入力(GPIO26〜28)として使用する場合は、プル設定があると誤差が発生しやすいため PULL_NONE
が推奨されます。
from machine import Pin
Pin(n, Pin.IN, Pin.PULL_UP) # n番GPIOを入力+プルアップ
Pin(n, Pin.IN, Pin.PULL_DOWN) # n番GPIOを入力+プルダウン
Pin(n, Pin.IN) # 入力モードでプルなし(PULL_NONE)
from machine import Pin, ADC
import time
button = Pin(14, Pin.IN, Pin.PULL_UP) # プルアップでボタン入力
adc = ADC(Pin(26)) # ADC入力 → PULL_NONEが望ましい
while True:
print("BTN:", button.value(), "ADC:", adc.read_u16())
time.sleep(0.5)
Pico Wでは、1端子当たりの出力できる電流は4mAまでです。
C言語で8mA、12mAに設定できますが、MicroPythonでは設定が難しいので4mAまでとして使用してください。
GPピンの電流の合計の最大値は50mA という制限があります。
1端子当たり、2mA前後で設計すると、25PINまで入出力としてGPIO端子を活用できます。
GPピンに入力されるシンク電流と、GPピンから出力されるソース電流の合計が50mA以内ですです。
GP 26 ~ 28 は ADC 対応で、VDDIO (3.3V) レールへの内部逆ダイオードを備えているため、入力電圧は VDDIO プラス約 300mVを超えてはなりません。スペックは3.6V以下になりますが、3.3Vを超えてはいけないと考えましょう。
RP2040 に電源が供給されていない場合、ADCの GP26~28 ピンに電圧を印加すると、ダイオードを介して VDDIO レール(電源ライン)に電流が「リーク」します。
リークした場合、Pico WのGPIOなどに接続されている周辺回路に3.3Vの電圧がかかるので、周辺回路が動作する場合があります。意図しない動作なので誤動作の原因になる可能性があります。
ADCに接続デバイスの仕様書からアナログ出力は3.3V以下であるを確認してください。
ADCに入力するセンサーなどの電源ON/OFFのタイミングをUSB、VBUS、VSYSなどから供給する電源とタイミングを合わせることで対策できます。
GPIO ピン 0 ~ 25 (およびデバッグ ピン) にはこの制限がないため、RP2040 に電源が供給されていない場合でも、これらのピンに最大 3.3V までの電圧を安全に印加できます。
電源・制御ピン
ピン名 | 電圧 | 入出力 | 機能概要 |
---|---|---|---|
VBUS | 5V | 入力 | USB 接続時の 5V 電源。マイクロ USB 経由で電源供給時にここが 5V になる。 |
VSYS | 1.8〜5.5V | 入力 | Pico のメイン電源入力(電池・USB 両方対応)。この電圧を内部で 3.3V に変換。 |
3V3(OUT) | 3.3V | 出力 | 内部 LDO レギュレータで生成された安定 3.3V 出力。センサー等に電源供給できる。最大供給電流約。 |
3V3_EN | 0 または 3.3V | 入力 | LDO レギュレータの有効/無効制御。LOW にすると 3.3V 出力が無効(Pico 停止)。 |
RUN | HIGH/LOW | 入力 | Pico の動作ON/OFF制御。LOW にすると CPU 停止。外部マイコン等から制御可能。 |
使用例
使用目的 | ピン | 方法 |
---|---|---|
USB給電が来てるか確認 | VBUS | HIGH/LOW を GPIO などで監視 |
バッテリー給電 | VSYS | 3.7V リチウム電池などを直接接続 |
外部センサーに 3.3V を供給 | 3V3(OUT) | センサーの VCC に接続 |
電源自動ON/OFF制御 | 3V3_EN | 他マイコンの GPIO で HIGH/LOW を切り替え |
外部から強制リセット | RUN | スイッチやマイコンで GND に一瞬落とす |
VBUS(Pin 40)
- 説明:USB ケーブル経由で供給される +5V 電源。
- 用途:Pico が USB に接続されているか確認する際や、他回路の電源検出に使用。
- 注意:入力専用。ここに直接電源を供給するのは避ける。
VSYS(Pin 39)
- 説明:Pico のメイン電源入力(1.8~5.5V)。
- 用途:USB、バッテリー、外部電源などからの電源供給口。
- 特徴:
- 内部で 3.3V に降圧されて、全体に電力供給。
- 例:
- モバイルバッテリー → VSYS に接続
- USB から給電 → ダイオードを介して VSYS に流れる
3V3(OUT)(Pin 36)
- 説明:内部の LDO レギュレータが出力する 3.3V 電源。
- 用途:センサーや外部回路への 3.3V 電源供給。
- 電流容量:最大 300mA 程度(Pico 自体の消費電流を含める)。
余裕度を含めると200mAいないが理想。
3V3_EN(Pin 37)
- 説明:LDO(3.3Vレギュレータ)の ON/OFF 制御用ピン。
- 用途:LOW にすると Pico の電源をシャットダウンできる(外部スイッチ制御などに利用)。
- 通常状態:プルアップされているため、自動的に HIGH(ON)になる。
- 使い方例:
- 他マイコンでこのピンを LOW → Pico がスリープ状態に
- マイコンが起動後、GPIO で HIGH にして Pico を ON にする
RUN(Pin 30)
- 説明:RP2040 のリセットピン(Pico の CPU 停止制御)。
- 用途:このピンを一瞬 GND に落とすとリセット(再起動)される。
- 応用:他マイコンやスイッチから制御して強制リセットが可能。
📌VBUS/VSYSの注意点
電源の供給方法は3通りあります。
USB、VBUS、VSYSへ電源供給する方法があります。
電源の回路構成は、
・USB端子の+電源(VCC,VDD,VBUSと呼ばれている)とVBUSは直結されています。
USBの+端子 = VBUS
・VSYSはUSB = VBUSから、ショットキーバリアダイオードを介して約 0.2〜0.3V電圧降下した電圧になっている端子です。
VBUS端子は、二つの役割を使い分けられます。
USB端子と直結しているので、VBUS端子から周辺回路部品へ電源供給する出力端子としての役割。もうひとつは、PCなどからUSB給電しない時は、VBUS端子へ給電する入力端子の役割があります。
但し、この時、USB端子へもVBUSへ印加した電圧がかかっています。
VSYS端子は、USB5Vを供給できない場合、電池駆動させるときに電源供給する端子です。
乾電池1.5V*3=4.5V、リチウムイオン電池3.7Vなどが具体例になります。
但し、これらの電圧は、USB = VBUS ➡ VSYSの向きにダイオードがあるため、VBUSやUSB端子へは供給されません。
✅USB端子へ電源供給
PCとUSB接続して使用する場合は、PCからPico WのUSB端子へ5Vが供給されています。
・この時、VBUSはUSB端子と同電位です。
・USB端子から電源供給する場合は、直結しているVBUS端子へ電源供給しない。
・VBUS端子は、USB端子と同電位の電圧を出力する端子として使用できます。
・VBUS端子から、周辺回路部品への電源供給は可能です。
・但し、合計電流が電源供給元の出力できる電流値をこえないこと。この場合は、PCのUSB出力電流値になります。
・電流の消費量が多い場合は、Pico Wへの電源供給と周辺回路部品用の電源に分けて、別電源を用意する必要があります。
❌やってはいけないこと
・USB端子とVBUSに同時に電源供給すること
USB端子を接続したまま、VBUS端子に5V以上の電圧を印可すると、PC側に電流が流れてPCを破損させる場合がある。
・USB端子とVSYSに同時に電源供給すること
USB端子は通常5Vです。VSYSへの給電元が乾電池1.5V*3=4.5V、リチウムイオン電池3.7Vなどのとき、給電元へ5Vの電圧と電流が流れ、非常に危険です。
✅VBUS端子へ電源供給
VBUS端子へ電源供給する場合は、その前にUSB端子を抜いてください。
❌やってはいけないこと
・USB端子とVBUSに同時に電源供給すること
・VBUSとVSYSに同時に電源供給すること
✅VSYS端子へ電源供給
USBやVBUSへ電源供給した場合、VSYSはVBUSとVSYSの間にあるショットキーバリアダイオードで電圧降下した分、約 0.2〜0.3V低い電圧になっています。
・VSYS端子は、通常は出力する端子としては使用しません。出力端子として使用する場合は、VBUS端子か別電源で供給する方法になります。
・VSYS端子は、PCと接続して開発し、単独で動作させるときにPCとPico Wを切り離すとUSB電源供給ができなくなります。そのとき、VSYSへ電池などで電源供給します。
開発中はUSBと電池の接続、切り離しを繰り返すことになります。面倒ですし、集中しすぎて手順を忘れ、同時接続になってしまったときは危険です。
🔍対策案⇩
電池 ➡ Pico W VSYS端子の向きにショットキーバリアダイオード(電圧降下分、約 0.2〜0.3V)を介して電池などで電源供給する回路構成にしておくと、同時接続になっても危険を回避できます。
❌やってはいけないこと
・USB接続、VBUSへ電源供給と同時にVSYSへ電源供給すること
USBやVBUSへ逆流はしないが、VSYSに接続している電源元へUSBやVBUSの電圧で電流が流れ危険です。
通信方式
UART、I²C、SPI はすべてPicoとセンサー・モジュール間の通信方式です。
通信方式 | 読み方 | 配線本数 | 通信速度 | 通信方向 | 主な特徴 | 用途例 |
---|---|---|---|---|---|---|
UART | ユーアート(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter) | 2本(TX, RX)+ GND | 中程度(例:9600~115200bps) | 双方向(1対1) 非同期 送信(TX) 受信(RX) | 非同期通信(調歩同期式)(クロック線不要)シンプル構成 | GPS、Bluetooth、シリアル通信 |
I²C | アイツーシー (Inter-Integrated Circuit) | 2本(SDA, SCL)+ GND | 遅め~中程度(最大400kbps~1Mbps) | 双方向(1対多) シリアルデータ(SDA) シリアルクロック(SCL) | 複数デバイスを識別(アドレス制御) | 温湿度センサー(SHT、BME)LCD、RTCなど |
SPI | エスピーアイ(Serial Peripheral Interface) | 最低4本(MOSI, MISO, SCLK, CS)+ GND | 高速(数Mbps~数十Mbps) | 双方向(1対多) 送信(TX) 受信(RX) 同期クロック(SCK) デバイス選択(CSn) | 高速・高精度通信だが配線が多い | SDカード、TFT液晶、ADC/DAC |
使い分け
条件・用途 | 推奨通信方式 |
---|---|
複数デバイスを少ピンで接続 | I²C |
高速・大容量データ転送が必要 | SPI |
1対1、シンプルに使いたい | UART |
マイコンとPCの接続 | UART(USB経由) |
UART(シリアル通信)
- 構成ピン:
TX
(送信)RX
(受信)GND
(共通グラウンド)
- 特徴:
- シンプルで設定しやすい。
- デバイス同士が1対1で通信(複数接続は基本できない)。
- 同期信号(クロック)が不要。
- 通信速度(ボーレート)を両端で合わせる必要あり。
- 使用例:
- GPSモジュール
- Bluetooth(HC-05 など)
- PCとのUSBシリアル通信(Thonnyで見るデバッグ出力もUART)
I²C(アイツーシー)
- 構成ピン:
SDA
(データ線)SCL
(クロック線)GND
- 特徴:
- 複数のセンサーと1本のバス(アドレスで識別)
- プルアップ抵抗(2.2k~10kΩ)が必要
- スレーブのアドレス重複に注意
- 通信距離は短い(数十cmまで)
- 使用例:
- 温湿度センサー(SHT31, BME280)
- OLEDディスプレイ(SSD1306)
- RTC(時刻IC)
SPI(エスピーアイ)
- 構成ピン:
MOSI
(Master Out, Slave In)MISO
(Master In, Slave Out)SCLK
(クロック)CS
(チップセレクト)※デバイスごとに必要GND
- 特徴:
- 非常に高速(I²Cより桁違いに速い)
- 同時に複数のバイト送受信が可能(全二重)
- 配線が増えるため、複雑になりやすい
- 使用例:
- マイクロSDカード
- 高速ADC/DAC
- カラーTFTディスプレイ(ILI9341など)
ADCピン
ADC(Analog-to-Digital Converter:アナログ-デジタル変換器)は、アナログ信号(電圧)をデジタル値に変換する回路です。
Pico W の ADC
項目 | 内容 |
---|---|
ビット数 | 12ビット(0〜4095) |
入力電圧範囲 | 0 V 〜 VREF(通常 3.3V、35番ピン) |
入力チャネル数 | 5チャネル(ADC0〜ADC4) |
特徴 | ADC4は内蔵センサー専用(RP2040内蔵の温度センサ) |
読み出し方法 | ADC.read_u16() (0〜65535:12ビット値を16ビットにスケーリング) |
Pico WのADCピン配列
Pico Wのボード内のRP2040のADCチャネルは5PINありますが、GPIOとしてのボードの端子は3端子のみです。
ADC3は未使用、ADC4は内蔵温度センサ専用でボード内で完結されています。
ADC チャネル | GPIO | 物理ピン | 備考 |
---|---|---|---|
ADC0 | GP26 | 31番 | ユーザー入力用 |
ADC1 | GP27 | 32番 | 同上 |
ADC2 | GP28 | 34番 | 同上 |
ADC3 | なし | ― | 未使用・未割当 |
ADC4 | ― | ― | 内蔵温度センサ専用 |
VREF | ― | 35番 | 基準電圧(測定可能) |
用途例
たとえば以下のようなアナログセンサから値を取得する際にADCが必要です。
- 温度センサ(NTC、LM35など)
- 光センサ(CdSセルなど)
- 可変抵抗器(ボリューム)
- 水位センサ、pHセンサなど
データ信号の出力が3.3V以下のデバイスを選択してください。
Pico WのADC端子に3.3V以上の電圧が印加されると破損の危険性があります。
16bitにスケーリング
Pico WのADCは12bitですが、プログラム上の処理は、MicroPython 特有の関数read_u16()
で、12ビットの値(0〜4095)を 16ビット(0〜65535)にスケーリングして返します。いずれも0Vから3.3Vの範囲です。
adc = machine.ADC(26) # ADC0(GPIO26)
raw = adc.read_u16() # 0〜65535(実際のADCは12ビット)
voltage = raw * (VREF / 65535) # 実電圧に変換
ADC_VREF
Pico W における ADC_VREF
(35番ピン)は、ADC(アナログ-デジタルコンバータ)の基準電圧(Voltage Reference)に関する重要なピンです。
項目 | 説明 |
---|---|
ピン番号 | 35番ピン |
役割 | ADC の電圧変換の基準となる電圧(VREF)を供給または測定する |
標準接続 | 通常、3.3V ピン(36番)と内部的に接続されている |
使用目的 | 高精度な ADC 測定を行う場合に外部基準電圧を供給可能 |
デフォルト動作 | Pico W 内部では VREF ≒ 3.3V(VSYS → 3.3V LDOレギュレータ) |
注意点 | 内容 |
---|---|
出力ではない | 35番ピンは VREF入力 であり、通常は電圧源から供給する |
Picoの内部3.3Vと接続 | デフォルトでは内部3.3Vと繋がっているので、外部供給する際は分離が必要 |
外部供給時は要注意 | GPIOピンと同様、過電圧に弱いため、最大3.3V厳守 |
高精度な電圧源(3.300V ±0.01%)を用意できれば、外部からVREF35番ピンにへ供給することで一貫した高精度ADC測定が可能になります。この場合、36番ピンとの接続を分離する必要があります。
ノイズの影響で読み取り精度が下がる対策のひとつは、下記のADC_GNDでご紹介します。
🔍測定精度を低下させない基本的な回路構成
・ADCに接続するデバイスの電源(VDD,VCCなど)は3V3から供給する。
理由は、3V3とADC_VREFは内部で接続されて電圧もノイズも同電位で同期しています。
この3V3をデバイスと接続することにより、デバイス側も電圧とノイズが同電位で同期できます。
・ADCに接続するデバイスのGNDは、ADC_GNDに接続する。
理由は、ADC_GNDは他のデジタルGND端子と分離されていて、ADC_VREFのGNDであるため、電源同様にデバイスのGNDも電圧とノイズが同電位で同期できます。
アナログ設計者の方は理解できると思います。
たとえば、ノイズはだいたい電源とGNDに同期して現れています。
3.30Vの直流ラインとGND0.00Vの電位は3.30Vです。
イメージは、直流ラインに高周波ノイズの山が現れてそのピークは3.31Vになっているとき、GNDにも同期してノイズが現れ、0.01Vになっていています。しかし、0.01V分の高周波ノイズは、同期しているので、3.31Vと0.01Vで電位差は3.30Vになります。
ということは、高周波ノイズが電源ラインとGNDに同期して観測されたとしても、電位差は3.30Vのまま変化しないので、ノイズとしての影響は打ち消されていることになります。
デバイスの電源とGNDを3V3とADC_GNDに接続することで、ノイズの影響は最低限に軽減できることになります。
電源とGNDに同期していないノイズがいたとしても、デバイスの電源とGNDとは3V3と同期できていますので電位差は発生しにくいのでノイズとしての影響を受けにくくなります。
先ほどの直流ラインに高周波ノイズの山が現れてそのピークは3.31Vになっているとき、GNDには同期したノイズは現れていなく、0.00Vになっている場合は、電位差は3.31Vであり、0.01Vの山(ヒゲ )がノイズとして悪さすることがあります。
同期していても、3.31Vと0.005Vの場合は、3.305Vとなり、0.005Vがノイズとして悪さすることがあります。
ADC(アナログ → デジタル変換)
デジタル値 = (入力電圧 ÷ VREF) × ADCの最大値
VREF が変動すると測定値も変動します。
VREF = 3.276 # 実測値
adc_value = adc.read_u16() # ADCから16ビット(0〜65535)のデジタル値を読み取る
voltage = adc_value * (VREF / 65535) # デジタル値を基準電圧VREFに基づいて実際の電圧[V]に変換する
ADC_GND
ADC_GND(アナロググランド) は、正式には ADC Ground (AGND) または アナログGND と呼ばれ、以下のような役割を持つ重要なピンです。
Pico Wのボード内では、デジタルGNDと分離されたアナログGNDになっています。
項目 | 内容 |
---|---|
ピン名 | ADC_GND(物理ピン 33) |
接続先 | アナログ専用GND(グラウンド) |
主な用途 | ADC(アナログ-デジタル変換)回路のノイズ低減と精度確保のための接地 |
接続の注意点 | デジタルGNDとは分けて使うのが理想。ADC関連センサーだけこのGNDを使う |
他の名称 | Analog GND, AGND |
デジタル回路(LED点灯や通信など)では、大きな電流のスイッチングで高周波ノイズが発生します。
アナログ回路(センサーなど)は電圧の微小な変化を読み取るため、ノイズの影響で読み取り精度が下がることがあります。
このため、アナログ専用のGND(ADC_GND) を設けて、ADC周辺のみをこのGNDに接続することで、ノイズの影響を軽減します。
ピン名 | 内容 |
---|---|
ADC_GND | アナログ回路専用のGND(物理ピン33) |
ADC_VREF | ADCの基準電圧入力(物理ピン35) |
ADC0〜2 | アナログ入力ピン(GPIO26〜28) |
ADC4 | 内蔵温度センサー用ADCチャンネル |
これらの端子に接続するデバイスのアナログGNDは、ADC_GNDに接続するとデジタル回路で発生する高周波ノイズの影響を軽減できます。
デジタル回路のデバイスのGNDはADC_GND以外に接続して、アナログGNDとデジタルGNDを分離した配線にします。
ADCの精度向上が必要な場合は、ノイズ対策としてのこちらとADC_VREFの外部供給による電圧精度の組合せで効果的になります。
Zeroシリーズ
シングルボードコンピューター
カメラ撮影用、サーバー機能、AI処理用として、Pico Wと接続して拡張します。
Zero 2 W

Zero 2 W H

引用:Raspberry Piハードウェア - Raspberry Pi ドキュメンテーション
今回は、赤枠のZero 2 W Hで開発を進めていきます。
これらの他に、第1世代のRaspberry Pi ZeroとZero Wがあります。
ここでのご紹介は割愛します。
主な機能
1GHzクアッドコア64ビットArm Cortex-A53 CPU
512MB SDRAM
2.4GHz 802.11 b/g/n無線LAN
Bluetooth 4.2、Bluetooth Low Energy(BLE)、オンボードアンテナ
ミニHDMI®ポートとマイクロUSB On-The-Go(OTG)ポート
microSDカードスロット
CSI-2カメラコネクタ
HAT互換の40ピンヘッダーフットプリント(未実装)
H.264、MPEG-4デコード(1080p30);H.264 エンコード (1080p30)
OpenGL ES 1.1、2.0 グラフィックス
マイクロUSB電源
コンポジット・ビデオ・ピンとリセット・ピン(はんだテスト・ポイント経由)
65mm×30mm