地球上のあらゆる生命体に影響を与えている地球温暖化。100年後、生命体が住める地球は存在しているのか。
環境省の資料から抜粋してお伝えします。

温暖化の経緯・原因

1988年、トロント会議で温暖化が国際的な重要課題として初めて議論されています。
IPCC(気候変動に対する政府間パネル)は、2007年に発表した第4次評価報告書(AR4)で「温暖化には疑う余地がない」断定しました。
AR4は130カ国の政府による全会一致で、世界3,750名を超える査読のもと、結論付けられています。
現在2023年とすると、トロント会議は35年前、AR4は16年前の事です。

国際的な経緯

2015年9月に国連で「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中核をなす「持続可能な開発目標」SDGsが採択されました。
SDGsは17のゴールと各ゴールごとに設定された合計169のターゲットから構成されています。

2015年12月に気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)でパリ協定が採択されました。
日本は、2021年4月に、2030年度26%➡46%➡(挑戦50%)(2013年度比)の排出削減目標を表明。
着実な達成、長期的目標として2050 年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指す。
8年前と2年前の事です。

温室効果ガス

今から273年前、1750年以降の産業革命期からの人類の経済社会活動によって、人為的に温室効果ガスを排出してきました。
化石燃料である、石油、石炭を燃やして、豊かな生活を手に入れた半面、1750年に比べて、大気中の二酸化炭素濃度は40%も増加しています。
大気中の二酸化炭素濃度が増加すると、海洋に取り込まれる二酸化炭素の量も増えて、酸性化になります。

温暖化メカニズム

日本の温室効果ガス

温室効果ガスとは、
・二酸化炭素 Co2
・メタンガス CH4
・一酸化二窒素 N2O
・代替フロン GHG

世界のCO2濃度・平均気温

国別CO2排出量

日本の部門別CO2排出量

000150033.pdf (env.go.jp)

消費ベースから見た日本国内の温室効果ガス排出量

森林等からの吸収量の推移

Co2換算の排出量と吸収量

2021年度の排出量11億2,200万トン、吸収量4,760億トン。
吸収率は、4.2%。

カーボンバジェット(炭素予算)

IPCC第5次評価報告書によれば、2100年までの範囲では、パリ協定が定める産業革命以前からの人為起源の平均気温の上昇を2℃未満に抑える場合は、1861年~1880年平均と比べて2℃未満に抑える場合には、1870年以降の全ての人為起源の発生源からの二酸化炭素累積排出量を約2,900GtCO22.9兆トン)未満に留めることを要する。約1,900GtCO21.9兆トン)が2011年までに既に排出されている」と指摘しています。その場合、2011年までに既に累積で約1.9兆トンが排出されていることから、残りの累積排出量は実質で約1兆トンとなります。
環境省_平成29年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 状況第1部第2章第1節 パリ協定に至る国際社会の動向 (env.go.jp)

日本の観測データ

1900年から2020年で2℃以上上昇しています。
1980年から2020年の40年間では、0.5℃以上上昇しています。

温暖化による影響

温暖化の影響は自然環境や産業・経済活動、国民生活などへ直接的、かつ、間接的に連鎖して影響を与えます。
農業では、作物の品質不良や病害虫被害、水産業では魚種が北方に移動し漁獲量の変化が起きています。
海面水位の上昇では国土消滅の危機にさらされている国もあります。
豪雨の多発化、台風の巨大化により、土砂災害、水害、冠水、洪水、高波、海岸浸食などの影響が出ています。
半面、年間の降水日数は減少しています。山林での積雪が減少すると、雪解け水や湧き水も減少しダムが渇水する事態にもなると、生活水の不足に繋がります。
生物の北上、分布の変化により、感染症を媒介する節足動物や病原菌、外来種の増加も懸念されています。
これらは、国民生活の命、財産、健康にも影響を及ぼしていきます。

地球温暖化と気候変動

地球温暖化

地球温暖化とは人間活動に起因して大気中に放出されるGHG(二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、フロン等)によって、地球が暖められる現象。
気候変動と適応 | 気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT) (nies.go.jp)

気候変動

通常は数十年かそれよりも長い期間持続する、気候状態の変化。

国連気候変動枠組条約の定義
地球の大気の組成を変化させる人間活動に直接又は間接に起因する気候の変化であって、比較可能な期間において観測される気候の自然な変動に対して追加的に生ずるものをいう。

気候変動には、自然起源の内部過程あるいは太陽周期の変調、火山噴火などの要因も考えられますが、大気の組成を変化させる人間活動に起因するものとされています。
気候変動と適応 | 気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT) (nies.go.jp)

異常気象

異常気象とは、ある地域で30年に1回程度起きるめったにない気象のことを示し、温暖化がなくても自然現象として稀に発生する気象現象。
自然現象に加えて温暖化が進み、極端な自然現象の頻度が多くなってきています。

将来予測

世界平均気温が上昇していくにつれて、今世紀末までに

IPCCが2021年8月に発行した第一作業部会第六次評価報告書(WGI AR6)では、1850~1900 年から2010~2019 年までの人為的な世界平均気温上昇は1.07℃(0.8~1.3℃)である、「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」と述べています。長期的に観測された気温変化は世界のみならず日本においても上昇傾向にあります。

そして、IPCC 第6次評価報告書(AR6)では、1850〜1900年を基準とした世界平均気温は2011〜2020年に1.1℃の温暖化に達した。と報告されています。000126429.pdf (env.go.jp)

ほぼ確実:99%以上の可能性
可能性が非常に高い:90%以上の可能性
VH:確信度が非常に高い H:確信度が高い M:確信度が中程度

【1.5℃】と【2℃】の記述はIPCC 1.5℃特別報告書(2018)、それ以外は IPCC AR5WG1(2013)、WG2(2014)による。

2019 年までの人為的な世界平均気温上昇は1.07℃(0.8~1.3℃)。
今日までに世界中で、日本で体験している体感は1.07℃とは思えないほど、気象に関することを見聞きし、体験していると思います。
上記は、21世紀末(2076~2095年)までに、どう変化するかを予測されています。

たったの1.5℃、2.0℃ではないことがわかると思います。
1.5℃と2.0℃の差を見ても、大きな差があることが伺えます。0.5℃の差による地球への影響度合いがあまりにも違い過ぎ、失った環境はとり戻すことができない事象もあります。

現在、1.07℃とすると、1.5℃まで0.43℃です。この1.07℃から1.5℃になるまでも、年々温暖化の影響は甚大化していくはずです。
2.0℃未満に抑えることは、地球の限界域であり1.5℃未満を目標に各種取り組みを進めていくことが必要と感じ得ます。
2076年まで約50年、目の前です

「勝負の 10 年」

「第六次環境基本計画に向けた基本的事項に関する検討会取りまとめ」の内容を一部抜粋します。

2015 年 12 月に合意されたパリ協定では、世界共通の長期目標として、産業革命前からの地球の平均気温上昇を2℃より十分下方に抑えるとともに、1.5℃に抑える努力を追求することとされた。

2018 年 10 月に公表された IPCC 「1.5℃特別報告書1」において、現在と 1.5℃上昇との間、及び 1.5℃と 2℃上昇との間には、生じる影響に有意な違いがあることが示された。

2021 年 11 月の気候変動枠組条約 OP26 で合意された「グラスゴー合意」では、1.5℃に向け、2030 年に向けて野心的な気候変動対策を締約国に求めることとされた。

2023 年 3 月に公表された IPCC 第六次評価報告書統合報告書では、「温暖化を1.5℃又は 2.0℃に抑制しうるかは、主に正味ゼロの CO2 排出を達成する時期までの累積炭素排出量と、この 10 年の温室効果ガス排出削減の水準によって決まる」としている。

なお、IPCC の報告書は気候変動の評価が主眼ではあるものの、検討会では、地球温暖化と大気汚染の双方に影響を与える短寿命気候汚染物質(SLCP)について言及があった。
SLCP は生態系にも関わっており、大気や水質に与える気候変動の影響があるため、これらを統合した政策が重要との意見があった。

現行政策やNDCが強化されない限り、2050年時点でのエミッション・ギャップは大きく増加すると示唆されている。
UNEP「Emission Gap Report 2022」では、現行政策が継続されれば、2050 年における気温上昇は 2.8℃、現在提出されている NDC のうち無条件に実施される施策のみ考慮した場合(条件付 NDC シナリオ)では 2.6℃、NDC に盛り込まれた施策が所定の条件を満たしてすべて実施される場合(条件無 NDC シナリオ)では2.4℃と推計されている。

今世紀半ばまでにネット・ゼロ目標を達成すれば、このギャップを小さくすることができるとされているが、依然として 1.5℃との差は残ったままである(図1-2)。
このように、気候変動への対応は、この10年が決定的に重要(Critical Decade)であると言われている。検討会では、我が国としても、この「勝負の 10 年」において「何を実現すべきか」から「どう実現すべきか」に速やかにフェーズを移し、迅速かつ積極的に取り組む必要があるとの意見があった。

なお、我が国は 2013 年以降、7 年連続で温室効果ガスの排出量を減少させている。
000136282.pdf (env.go.jp)

2050年、現在2023年とすると、27年後には2.0℃を大きく超えている、2.4℃~2.8℃の上昇シナリオが指摘されています。

脱炭素につながる将来の豊かな暮らし

IPCC 第6次評価報 AR6統合報告書

2023年4月環境省 地球環境局 000126429.pdf (env.go.jp)

人間活動が主に温室効果ガスの排出を通して地球温暖化を引き起こしてきたことには疑う余地がなく、1850〜1900年を基準とした世界平均気温は2011〜2020年に1.1℃の温暖化に達した。

大気、海洋、雪氷圏、及び生物圏に広範かつ急速な変化が起こっている。人為的な気候変動は、既に世界中の全ての地域において多くの気象と気候の極端現象に影響を及ぼしている。このことは、自然と人々に対し広範な悪影響、及び関連する損失と損害をもたらしている。

2021年10月までに発表された「国が決定する貢献(NDCs)」によって示唆される2030年の世界全体のGHG排出量では、温暖化が21世紀の間に1.5℃を超える可能性が高く、温暖化を2℃より低く抑えることが更に困難になる可能性が高い

継続的な温室効果ガスの排出は更なる地球温暖化をもたらし、考慮されたシナリオ及びモデル化された経路において最良推定値が2040年(※多くのシナリオ及び経路では2030年代前半)までに1.5℃に到達する。

将来変化の一部は不可避かつ/又は不可逆的だが、世界全体の温室効果ガスの大幅で急速かつ持続的な排出削減によって抑制しうる

地球温暖化の進行に伴い、損失と損害は増加し、より多くの人間と自然のシステムが適応の限界に達する

温暖化を1.5℃又は2℃に抑制しうるかは、主にCO2排出正味ゼロを達成する時期までの累積炭素排出量と、この10年の温室効果ガス排出削減の水準によって決まる。

全ての人々にとって住みやすく持続可能な将来を確保するための機会の窓が急速に閉じている。この10年間に行う選択や実施する対策は、現在から数千年先まで影響を持つ

気候目標が達成されるためには、適応及び緩和の資金はともに何倍にも増加させる必要があるだろう。

緩和と適応 IPCC 第6次評価報 AR6統合報告書

地球温暖化の対策には、その原因物質である温室効果ガス排出量を削減する(または植林などによって吸収量を増加させる)「緩和」と、気候変化に対して自然生態系や社会・経済システムを調整することにより気候変動の悪影響を軽減する(または気候変動の好影響を増長させる)「適応」の二本柱があります。

緩和

温暖化を1.5℃又は2℃に抑えるには、この10年間に全ての部門において急速かつ大幅で、ほとんどの場合即時の温室効果ガスの排出削減が必要であると予測される。世界の温室効果ガス排出量は、2020年から遅くとも2025年までにピークを迎え、世界全体でCO2排出量正
味ゼロは、1.5Cに抑える場合は2050年初頭、2℃に抑える場合は2070年初頭に達成される。

実現可能で、効果的かつ低コストの緩和と適応のオプションは既に利用可能だが、システム及び地域にわたって差異がある。
100米ドル/トン-CO2以下のオプションによって2030年までに世界全体の排出量を2019年比で半分以下に削減しうるだろう。

エネルギー供給
太陽光、風力、メタン削減(石炭、石油、ガス由来)、バイオマス発電(BECCSを含む)、地熱及び水力、原子力、CCS

土地・水・食料
自然生態系の転換削減、農業における炭素隔離、生態系の回復・新規植林・再植林、持続可能で健康的な食生活、持続可能な森林経営の向上、農業におけるメタンとN2O削減、食品ロスと廃棄の削減

居住・インフラ・健康
効率的な建築物、低燃費車、EV、効率的な照明・家電・機器、公共交通機関・自転車、バイオ燃料、効率的な海上・航空輸送、需要削減、再エネの自家発電

社会・生活・経済
燃料転換、フロンガスの削減、エネルギー効率、材料効率、メタン削減(廃棄物・廃水由来)、建築材料転換、リサイクルの強化、CCUS/CCS

コストが20米ドル/トン-CO2以下の太陽光、風力、エネルギー効率改善、石炭、石油、ガス等に起因するメタン削減が排出削減に大きく貢献

適応

「適応」とは、「現実の気候または予想される気候およびその影響に対する調整の過程。人間システムにおいて、適応は害を和らげもしくは回避し、または有益な機会を活かそうとする。一部の自然システムにおいては,人間の介入は予想される気候やその影響に対する調整を促進する可能性がある」と定義されています。気候変動による悪影響を軽減するのみならず、気候変動による影響を有効に活用することも含みます。

2018年、日本では「気候変動適応法」を制定しました。
気候変動適応法では、各地域が自然や社会経済の状況に合わせて適応策を実施することが盛り込まれています。
気候変動適応法は、適応の総合的推進、情報基盤の整備、地域での適応の強化、適応の国際展開等の4つの柱で成り立っています。


2020年、日本は「気候非常事態宣言」を採択しました。
2021年には「地球温暖化対策の推進に関する法律」を改訂し、国際社会と足並みをそろえて脱炭素社会の実現を目指すことを宣言しました。
一方、将来の気候変動の影響に備えるため、各自治体が気候変動適応法に従って地域気候変動適応計画を策定しています。気候変動の影響は私達の社会に深刻な影響を及ぼすため、日本でも緩和と適応の両輪で気候変動の課題に社会全体で取り組むことが今求められています。

気候変動適応計画

「気候変動適応計画」第2章に記載されている分野別の影響と適応策

農業・林業・水産業
農業生産総論水稲果樹
麦、大豆等(土地利用型作物)野菜等畜産、飼料作物
病害虫・雑草等農業生産基盤
木材生産(人工林等)特用林産物(きのこ類等)
回遊性魚介類(海面漁業)増養殖業(海面養殖業)増養殖業(内水面漁業・養殖業)
沿岸域・内水面漁場環境等(造成漁場)
野生鳥獣の影響(鳥獣害)食料需給
分野別影響&適応 | 気候変動と適応 | 気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT) (nies.go.jp)
水環境・水資源
水環境水資源
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自然生態系
陸域生態系淡水生態系沿岸生態系
海洋生態系生物季節、分布・個体群の変動生態系サービス
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自然災害・沿岸域

河川沿岸(高潮・高波等)山地(土砂災害)
山地(山地災害、治山・林道施設)強風等
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健康
暑熱感染症冬季の温暖化
その他
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産業・経済活動
金融・保険観光業産業・経済活動(金融・保険、観光業以外)
その他(海外影響等)
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国民生活・都市生活
インフラ、ライフライン文化・歴史などを感じる暮らしその他(暑熱による生活への影響)
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関連リンク
AR6 統合報告書

公表日2023年3月20日
報道発表
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書統合報告書の公表について

報告書の入手先
AR6 Synthesis Report: Climate Change 2023(外部リンク)

和訳
「政策決定者向け要約」文科省、経産省、気象庁、環境省による暫定訳【2023年4月17日時点】 - [PDF:3.03MB]

解説資料等
統合報告書の概要(簡易版)【2023年4月】 - [PDF:1.63MB]

国内外におけるESG金融の拡大