目標発電電圧は600mV

小中高生(学生さんも)のみなさん、こんにちは!! はじめまして。ハットおじさんです。
皆さんは、SDGsを知っていますよね?

微生物燃料電池で関連するゴール

SDGsの認知度は、28か国の世界平均74%に対し、日本は49%。28か国中最低値。色々な意味でかなしいことですね。世界のすべての人類共通の目標なのにです。
今回は、SDGsのテーマのひとつでもある、Goal 3の健康,7のエネルギー,9の技術革新に関連して燃料電池の実験をご紹介します。しかも、微生物で発電します。

自由研究のテーマにいかがでしょうか。

SDGsを詳しく知りたい方はこちら。
環境省
総務省

世界中のSDGsの取り組みを動画で視聴したい方はこちら。
SDGs.TV

2050 年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略

内閣官房を筆頭に、10の府省庁が連名で令和3年6月 18 日に発行しているグリーン成長戦略です。

一部抜粋しますと、
2050 年カーボンニュートラルに向けては、温室効果ガス排出の8割以上を占めるエネルギー分野の取組が特に重要となる。

2050 年カーボンニュートラルに向けて、電力部門の脱炭素化は、大前提である。現在の技術水準を前提とすれば、すべての電力需要を 100%単一種類の電源で賄うことは一般的に困難であり、あらゆる選択肢を追求する。

再生可能エネルギーは、最大限導入する。このため、コストを低減し、地域と共生可能な適地を確保し、蓄電池等も活用して変動する出力の調整能力を拡大していく。こうした取組を通じて、洋上風力産業や蓄電池産業、次世代型太陽光産業、地熱産業を成長産業として育成していく必要がある。

火力については、CO2回収を前提とした利用を、選択肢として最大限追求していく。技術を確立し、適地を開発し、併せてコストを低減していく。世界的にも、アジアを中心に、火力は必要最小限、使わざるを得ない。こうしたことを踏まえると、水素発電は、選択肢として最大限追求していく。供給量と需要量をともに拡大し、インフラを整備し、コストを低減する。そのため、水素産業の創出が必要である。同時に、カーボンリサイクル産業や燃料アンモニア産業を創出していく必要がある。

電力部門以外(産業・運輸・業務・家庭部門)は、電化が中心となる。熱需要には、水素などの脱炭素燃料、化石燃料からの CO2の回収・再利用も活用していくこととなる。電化により、電力需要が増加することが見込まれる中で、省エネ関連産業を成長分野として育成していく必要があり、熱需要においてはガス供給事業の在り方を、次世代の熱エネルギー供給として対応できるよう、大きく成長させる必要がある。

発行されている資料はこちら

微生物燃料電池

微生物とは、今回は土の中にいる微生物をさします。

燃料電池とは、水素酸素を化学反応させて、電気を発電する装置です。
水の電気分解の逆になります。

水の電気分解では、電気を使って水素と酸素ができましたね。最初は水と電気がありました。
水に電気を流すことで、水素と酸素ができました。

水と電気で水素と酸素ができたというとことは、その逆をやると、電気ができるんです。
水の電気分解の逆で発電することを燃料電池といいます。

では、どうやってやればできるのでしょう?

水素はどこにある?見えないし。酸素もどこにある?見えないし。空気中に混ざっているのにどうやって用意すればいいの?

今回の実験では、酸素はみんなが吸っている空気をそのまま使います。
では、水素はどうするの?

実験のテーマにあるように、微生物に手伝ってもらい水素を作ってもらいます。 微生物は、色々なところに色々な種類がいますが、普段は見ることができてませんよね? 顕微鏡を使ってみたことはあるかな?

今回は、土の中にいる微生物にお手伝いしてもらいます。 微生物も生き物ですから、ご飯とおかずを食べないと死んでしまいます。増殖したり、細胞分裂するのにご飯とおかずが必要です。

発電するために、水素を作るお手伝いしてもらうので、ご飯もおかずもたくさんあげましょう。 犬や猫のご飯は、ドックフードやキャットフードですね。

土の中の微生物のご飯とおかずは何でしょう?

森林や草原の土の中には何が混ざっていますか?

一番多いものは、落ち葉が積もって、雨で濡れて、だんだんと粉々になって土になる腐葉土ですね。畑にも腐葉土を撒いて土に栄養を与えて、その栄養を植物が吸い上げて、光合成して、おいしい野菜や果物、お米や麦になりますね。

微生物のご飯は炭素Cです。おかずは難しいので答えを言いますと、窒素(チッソ)Nです。

炭素とチッソをあげると、水素をたくさん作ってくれます。ご飯とおかずがなくなるまで増殖して仲間を増やして作り続けてくれます。

微生物が活発に活動するためには炭素とチッソが必要なのです。

炭素とチッソがある間は、水素を作り続けてくれます。空気はどこにでもあるので、酸素は常にあります。あとは、水素があれば発電ができます。

では、燃料発電に必要な水素をたくさん作ってくれる微生物が活発に活動できる環境はどうしたらよいでしょうか?

微生物燃料電池に必要な環境は、嫌気性(けんきせい)状態です。難しいですね。

嫌気性状態とは、無酸素状態のことです。酸素がない方が活発に活動できる微生物を嫌気性微生物と言います。今回はこの嫌気性微生物に活躍してもらいます。
嫌気性微生物は水と有機物があれば、酸素がなくても生きていける微生物です。

因みに、嫌気性の逆があり、好気性(こうきせい)といいます。好気性は酸素がある状態です。好気性微生物もいます。

コンポストを知っていますか?家でやっている人はいますか?
コンポストは、野菜のクズや、食べ残し、生ごみを肥料にかえる装置です。密閉型のコンポストは、酸素を遮断しているので嫌気性状態です。

コンポストには、生ごみに白っぽい粉をかけてよく混ぜます。この粉の正体は嫌気性微生物です。頭の中が整理できてきましたか?

ここまでに出てきた言葉を整理しよう!

微生物
燃料電池
水素
酸素
電気

炭素
チッソ
嫌気性
無酸素
嫌気性微生物
コンポスト

たくさん出てきましたね。
この後ももう少し新しい言葉が出てくるのでここまでに出てきた 言葉は整理しておいてください。

みなさん、モヤモヤしていることはありませんか?
発電には酸素が必要と言っているのに、嫌気性=無酸素状態、酸素がないとはどういうこと?と思っていますよね?

ここは、あとでわかるので、今は、嫌気性微生物が活発に活動できる環境は無酸素状態が良いことだけを密閉型コンポストと一緒に覚えてください。

水素を作り出してもらう微生物に良い環境は無酸素状態が良い。です。

はやく燃料電池を作りたい!?

わかりました、先に作りましょうか?でも、なぜ発電できたのかも研究してくださいね。

もう一つだけ、先に伝えておきます。出来上がりのイメージは大切です。
そのイメージは、水が張っている田んぼです。オタマジャクシとカエルは今回使いませんよ。

微生物燃料電池装置の完成イメージ

微生物燃料電池の制作に必要なモノ

あまりお金をかけないで、代用できるものを探したり、友達と分け合って準備しましょう。ご家族や先生に相談してくださいね。

材料

発電容器

1Lの容積があれば、何でも良いですが、ペットボトルを切るとき、切り口には気を付けてください。

フタ

発電容器に入れた土にフタをします。容器とフタの間にすき間なくフタをしたいです。なるべく土を密閉できるように工夫してください。
例えば、クリアファイルをペットボトルの内径に合わせて丸く切ったり、プラスチックゴミをフタにするなどしてください。水に溶けないもので電気を通さない材質を選んでください。切るとき、切り口には気を付けてください。

家の畑の土でも良いですが、黒土が適しています。100円ショップにもあります。
お知り合いに田んぼを持っている人がいれば、田んぼの土でも良いです。田んぼの土はなるべく深い土を採取してください。勝手に取ってきてはダメですよ。
人口池や沼の場合、底にシートを張っている場合があります。スコップを挿すとシートを破り、池などを破壊してしまいますので、勝手に採取しないようにしてください。

腐葉土

今回は微生物のご飯になる炭素Cとして腐葉土を使います。100円ショップにもありますが、どこかに落ちている枯れ葉を何日か水に漬けておいても代用できます。
土と混ぜ合わせるとき、細かく砕いてください。公園の木の下の落ち葉でも良いです。やわらかいものを選びましょう。

チッソ

チッソとしては販売されていないと思いますので、ホームセンターや園芸店に尿素として売られています。チッソ含有量が多いものを選んでください。100円ショップでは見かけませんでした。

尿素 チッソ含有量46%
嫌気性微生物

コンポスト売場にあります。密閉型コンポスト用であれば、嫌気性微生物です。
好気性微生物も販売されているので間違えないように気を付けてください。写真のモノであれば、ネットでも入手できます。

嫌気性微生物
活性炭

熱帯魚コーナーなどにあります。家に木炭があれば底にたまっている木炭の粉でも代用できます。
木炭も活性炭も顕微鏡で見ると小さな穴がたくさん開いています。その穴の表面積は木炭のかけらほどの大きさでも畳何畳分にもなります。この小さな穴が微生物の家になります。
木炭と活性炭の違いは、この目に見えない小さな穴の大きさです。木炭の方が大きいです。

活性炭 どちらを選ぶ?
電極マイナス

電極に微生物がたくさん付着できるように表面積が必要です。
スチールの金たわしが100円ショップで売っています。沢山入っていて余るので分け合うのも良いと思います。
被覆が付いている銅線。中の銅線が単線(1本)ではない銅線。100円ショップにあります。マイナスの電極用なので色は黒が適していますが、何色でも良いです。

金たわしと被覆が付いている銅線
電極プラス

水に溶け込んだ酸素と電子、水素イオンを化学反応させる電極です。
土に被せたフタの上におきます。エナメル線ではない銅がむき出している銅線です。太さは0.4mm以上であればよいです。例えば、1mの長さの銅線を丸めたり、星形、ハート形などの形を作って水に浸すます。

エナメル線ではない銅線
工具など

バケツ、または、ビニール袋
土を混ぜる小さいスコップなど
紙コップくらいの大きさの容器
カッターナイフ
はさみ
ニッパー
電圧を測るテスター (家にあるかなぁ?)
小さいモーターやLED

微生物燃料電池の作り方

材料や必要な道具が揃ったら、さっそく作りましょう!楽しみですねー!

発電容器の準備

発電容器はペットボトルの場合は、1.5L以上のモノを選びましょう。丸でも四角でもどちらでも構いません。よく洗ってください。
ペットボトルの首の部分を切り落としして、発電容器の上の端から1cm位下に対象に二つの穴を開けます。
電極プラスと電極マイナスの銅線を通す大きさの穴を開けます。

発電容器

電極マイナス

金たわしは、細い繊維状になっていて飛散しやすいので、金たわしの作業をするときは、目や口に入らないようにマスクやゴーグル、メガネを付けてください。
爪の中にも入りやすいので力を入れ過ぎないようにしてください。金たわしは丸まっているので、中心にはさみを入れて片側だけ切って開きます。

丸まっていた金たわしは、発電容器の直径*直径の2倍の長さの長方形にしておきます。開いた後、簡単に引っ張ったり、縮めたりして形を作れます。
作り終わったら、手についている金たわしの破片を水で洗い流しましょう。もし目に入った場合は、絶対にこすらないでね。風向きを考えて作業しましょう。

金たわしの加工

被覆が付いている銅線の被覆を剝きます。うまくできるかな?少し難しいです。
被覆付銅線の長さは、10cm + 発電容器の高さ + 発電容器の直径です。

被覆を剥く長さは発電容器の直径と同じ長さです。
被覆を剥くときは、中の銅線を切らない、傷つけない程度に慎重に被覆だけにカッターで切り込みを入れます。線を台に乗せてカッターの刃をあてて、線を回しながら切り込みをいれていきます。
被覆を引っ張ると被覆が剝けます。剥けない時は、半径の長さで切り込みを入れて何回かに分けて剥いていきましょう。
銅線の反対側も1cm~2cm同じく剝いておきましょう。

長方形の平たい金たわしと、被覆を剥いた銅線ができました。
このままにして次の作業をします。

電極プラス

エナメル線ではない銅線を1mほど用意して、発電容器から10cm出す長さを残して、残りの長さで好きな形を作ります。立体的ではなく、平面の方が良く、発電容器の内径より周囲1-2cm程度小さい大きさにします。

プラス電極

フタ

発電容器に入れた土を密閉するフタを作ります。発電容器の内径と同じ大きさ切っておきます。

フタ

微生物が入った土

土は水を入れると容積が目減りするので、容器1Lに対して出来上がりを7割にするには、水を入れていない状態で8割くらいにします。

容器1Lに対して、黒土3:腐葉土3:微生物1:尿素(チッソ):1をよく混ぜます。
紙コップなどの容器を使うと配分がわかりやすくなります。 バケつなどの容器か、ビニール袋に入れてよく混ぜます。
微生物と尿素は多めでも構いません。

土づくり

この土の中に電極マイナスで作った金たわしを入れて、金たわしの中に土が入り込むように揉み込みます。発電させる容器に、混ぜあわせた土を1だけいれます。

この上に土をまぶした金たわしを90度に折ってを入れます。
その上に直径の長さに剥いた銅線を扇形に広げて、活性炭のパック1つを開けて中身の活性炭をまんべんなく振りかけ、金たわしで挟み込みます。
活性炭のパックは2つでもよいです。金たわしの下と折りたたんだ後の上に追加してもよいです。活性炭の役割は何でしたか?

この時、発電容器の穴に銅線を通して、穴からまっすぐに下に来るように銅線の位置を合わせておきます。
上から軽く押し込んで、折りたたんだ金たわしをできるだけ密着させます。


電極と活性炭の近くに微生物がたくさん増えるようにします。
その上に発電容器の8割になるように混ぜ合わせた土を入れます。この時、容器に土を入れたら、地面から10cmくらいの高さから数回落として土を沈めます。8割になるまで土を足していきます。

フタをする

嫌気性状態、無酸素状態にするためにフタをします。 少しくらいの隙間があっても大丈夫です。
土の表面スレスレになるまで水を入れてからフタをしても良いです。

仕上げ

電極プラスと水を入れます。どちらが先でも良いです。
電極プラスは発電容器の赤い穴に通してください。形を作った電極が水平になるように銅線のクセを直します。フタに付いても問題ありません。

ここで一度、プラスとマイナス間の電圧を測ってみてください。何Vでしたか?

水は水道水で良いです。少しずつ、静かに入れないと、フタの上に土が上がってきて見た目が悪くなるのでゆっくり入れましょう。
土の中にあった空気が水を入れることによって湧いてきます。この泡ぶくと一緒に土が上がってきます。発電容器を少し傾けながら静かに水を入れると良いです。

微生物燃料電池の完成!

これで完成です!お疲れさまでした!

858mVと883mV  開始から6週間後程度でも発電を継続しています。

電圧を測ってみよう

テスターがある人は、電圧を測ってください。
テスターで直流の2000mVレンジに合わせて、いざ測定。
あらら。目標の600mVは出ていない!300mV台で数字が動いている!?
固定したモーターをつなげてみましょう!回りましたか?

大丈夫です。発電量や電圧が安定して高くなるには時間がかかります。
土の中にはまだ酸素がたくさん残っています。酸化還元がフタの下の土の中で起きているのと、微生物が炭素とチッソをまだたくさん食べていないからです。

だんだん嫌気性状態になって、安定するには2,3日から1週間くらいかかります。
微生物燃料電池の作り方が影響しますが、ガッカリしなくても大丈夫です。安定するのが早いからと言って高い電圧を発電するとは限りません。遅い方が発電電圧が高いかもしれません。

これを毎日、決まった時間に測って記録してください。グラフにしましょう。
テスターの電圧値が安定しない時は、自分でルールを決めましょう。
テスターをつないでから何秒後の数値を記録する、または、数字が止まってから 数値を記録するなどです。決めたルールは最後までそのまま続けてください。

自分で決めたルールは守りましょう!

その日の気温や湿度、天気も一緒に記録すると、発電電圧との関連性を発見することができるかも知れません。 朝と、昼と、夜で発電電圧が違うかもしれません。何かの法則を見つけ出せるかも知れません。
予想を立てて、楽しく、研究しましょう!

予想通りにいっても、いかなくても、なぜそうなったのかを解明する努力をしましょう。 調べてもわからないことがあるかも知れません。もしかすると、今までに誰も発見 できていないことを発見したかもしれませんね。それはすごいことになりますよ。

この微生物燃料電池を同時に2個、3個作ると、乾電池のようにつなげた合計の電圧値は高い電圧を作ることができます。 同じものを複数個作るのも良いですが、条件を変えたものを作ると色々なことがわかって楽しいです。

例えば、ご飯とおかず、炭素とチッソの比率を変えてみるとか、活性炭と木炭の差を確かめる、粉を電極マイナスにたくさん振りかけてみるとか、木酢を入れてみるなどで比較すると、発電電圧が一番高くなる条件を整理できるかもしれ ません。

発電電圧の目標は600mV、800mVを超えたらすごい上手にでき事になります。最低でも400mVは発電するでしょう。400mV以下の時は何が間違え ている可能性が高いです。
もし、ひとつの微生物燃料電池で1,000mVを超えた場合は、連絡してください。どうやってつくったか、教えてください。

LEDを点灯させようとすると、LEDの色にもよりますが、点灯する電圧は2.7V以上必要になると思います。 乾電池1個では点灯しないと思います。 モーターは乾電池よりももっと低い電圧で回転します。回転しているかどうかをわかりやすくするのは、モーターの芯にテープでも撒いておくとスピードがわかりやすくなります。

モーターにプロペラを付けた時は、モーターが高速回転した時、手を切らないように注意しましょう。モーターは必ずどこかに固定してから線をつなげてください。

さて、これで終わりではありません。 どうして、発電できるのか、どうやって発電しているのかのしくみを勉強することが必要です。 水素と酸素、これらがどうなって発電するのかな?

発電の仕組み

微生物が炭素やチッソを消化して分解するとき、水素イオン電子を排出します。
これは、一般的な燃料電池で水素を分解して水素イオンと電子を作る反応と同じです。

微生物に水素を作ってもらうとお話ししましたが、水素を分解して水素イオンH+にしてくれています。
この時、同時に電子e-も排出されています。

ここからは少し難しいですが、酸化還元反応が関係しています。酸化と還元は必ず同時に起こります。

酸化

ある物質が水素を失う反応を酸化といいます。
ここでは、微生物が炭素やチッソを消化、分解して水素イオンを排出しています。その場所はどこですか?そうです、マイナス電極で酸化が起きています。

金たわしに微生物のすみかになる活性炭(木炭)を振りかけましたよね。

同じく、ある物質が電子を失う変化も酸化といいます。
微生物が炭素やチッソを消化、分解して水素イオンを排出するのと同時に電子も排出しています。

マイナス電極では、水素イオンを排出する酸化と、電子を排出する酸化が同時に起きています。

還元

酸化の次は還元です。

ある物質と水素が結びつく反応を還元といいます。
ある物質が電子を得る変化も還元といいます。

微生物によって、酸化が起こり、水素イオンH+と電子e-は排出されました。
この二つはどこに行くのでしょうか?そして、どこで還元するのでしょうか?

水素イオンは水素イオンとして水中に存在できます。
電子は電子単体で存在できないため、電子をもらったり、あげたりして電子を伝達してくれる相手が必要になります。

マイナス極

マイナス極では微生物が輩出した水素が水素イオン(H+)と電子(e-)に分離します。
水素イオン(H+)は水を通り抜けてプラス極側に移動します。
水素イオン(H+)は、金たわし、銅線ではなく、水の中を通り、フタのすき間からフタの上に移動します。

水素 ➡ 水素イオン H+ + 電子 e-

H2 ➡ 2H+ + 2H+ 2e-

電子(e-)は微生物が付着している金たわし、銅線を通って、モーター(またはLED)を通って水の中に沈めてあるプラス極側に流れていきます。

水素イオンは水の中を通って、電子は銅線を通って、それぞれの経路でブラス電極へ移動します。

プラス極

プラス極では、銅線を通って、モーター(またはLED)を通ってやってきた電子e-がフタの上の水に溶け込んでいる酸素とくっついて、酸素イオン(O2-)になり、同時に電気が流れます

おめでとうございます!
これが発電です!これが燃料電池と呼ばれる発電になります!

酸素 02 + 電子 e- ➡ 酸素イオン 02-  同時に電気が流れます。

そして、水の中を通ってきたH+は02-と結合して水H20になります。
4H+ + O2 + 4e- ➡ 2H2O

電気と水ができました!

先ほど
ある物質と水素が結びつく反応を還元といいます。
ある物質が電子を得る変化も還元といいます。
と説明しました。
電子は何とくっつきましたか?酸素ですよね。なので還元ですね。
水素は何とくっつきましたが?これも酸素ですよね。なので還元です。

プラス極は還元をうけおっていました。
マイナス極は何をうけおっていたか覚えていますか?

酸素

発電容器に入れた水の水面は空気と触れています。空気と水が触れるだけで空気中の酸素が水の中に溶け込みます。
大きめの水槽で金魚やメダカを飼うとき、ブクブクを入れなくても酸欠にならないのはこのためです。魚がたくさんいるときはブクブクは必要になります。

土の上にフタをしたのは、ひとつは、土の中に酸素が入らないようにするためと、もう一つはフタの上の水には酸素を溶け込ませるためです。
嫌気性(無酸素状態)と好気性(有酸素状態)の環境を分けるためにフタで区切っています。

酸化させて水素イオンと電子を取り出すためには、嫌気性微生物が活発化する無酸素状態が必要で、水素イオンと電子e-を還元させて電気を流すためには酸素が必要ということです。

最初の方で疑問だった、酸素、嫌気性、無酸素が整理できましたか?

本来はフタの上の酸素と電子を還元させて電気を流したいのに、フタの下、つまり土の中に酸素があると、微生物の近くで酸化と還元が起きてしまい、モーターなどに電気を流すことができなくなります。そのために嫌気性状態を利用して還元する場所を微生物から遠い場所にすることで、より多くの電気を流せるようにしています。

そうです。マイナス電極とプラス電極が遠いほど発電電圧は高くなります。
ペットボトルではなく、パスタの保存容器のような細長い容器の方が、マイナス極とプラス極の距離を多くとれるので、発電電圧を高くすることができる可能性があります。

ここまでに出てきた言葉を今度は自分で整理してみましょう。
たくさんの言葉を勉強してかしこくなりましたね!

まとめ

燃料電池ではマイナス電極で水素から電子を作り(H2→H++2e-)、プラス電極で空気から取り入れたO2が電子を消費して(O2+4H++4e-→2H2O)、電気が流れ、水に還元されます。

水の電気分解の逆、水素と酸素で、電気が流れ、水ができました!

今回はテーマにしていませんが、酸化還元反応はヘドロなどの土壌汚染を浄化できます。
もし、ヘドロの中に、この発電装置を設置すると、ヘドロが分解されてきれいな土壌に改良することも可能です。しかし、かなり大掛かりになるのと、ヘドロは底なし沼のように危険なので、絶対に近寄らないでくださいね。

例えば、池の水を抜いた後には、ヘドロがあり、悪臭もしています。こういうヘドロが時間をかけて改良されていきます。同時に発電もできます。

微生物燃料電池は、このように自然を利用した非常に環境に優しい発電になります。
SDGs、学校で習っていますよね?
エコ、脱炭素、カーボンニュートラル、CO2削減、ゼロエミッションや太陽光発電、風力発電、地熱発電など色々と聞いたことがあると思います。

皆さんが大人になって年を取り、皆さんに子供ができて、孫ができた時代の世界は今のまま進んでいくと大変なことになります。地球に住むことができなくなっているかもしれません。

そうならないよう世界中で色々な人が色々なことに取り組んでいます。
すべての世界人類の共通目標がSDGsです。みんなもできることから参加していきましょうね。

応用

せっかく発電できたんだけど、乾電池よりも電圧が低いです。二つ作った人は直列につなげると乾電池一つ分の1.5Vくらいにはなると思いますが、今回の燃料電池の容量はそんなに多くありません。微生物のご機嫌次第です。

モーターを回すだけでは面白くないですよね。理科の実験でやったことを思い出して、鉄心コイルや磁石を作ったり、この発電機で動かすことができることのアイデアを何か考えてみましょう。
この微生物燃料電池を設置できる場所も考えてみましょう。

ハットおじさんは、山の中や電線が無くて電気が通っていない地域の地面にこの燃料電池を作って、IoT(知ってるかな?)のセンサーやそのセンサーの信号を無線で送信するための電源として実験をしたいと思っています。

ハットおじさんの思い

みなさんが、これから大人になって、社会人になった時、今回のような燃料電池や発電の仕方を今よりももっと安全にもっと効率的に発電してエネルギー問題を解決していってほしいと思い、誰にでも作れる自然エネルギーの原理のひとつである微生物燃料電池を自分で作って体験(UX = User Experience(ユーザーエクスペリエンス))して改良してほしいと思いました。

今回の体験を通じて、環境やエネルギー問題に興味を持ち、調べたり、勉強したり、研究したりして、世界中の社会課題を解決していく人間になってほしいと願っています。

自分の国、日本だけ見ていてもダメです。今の日本は何十年も停滞していて、このままでは、これからも世界からおいて行かれます。

< 少年少女よ、大志を抱け!! >  Boys, be ambitious (ボーイズ・ビー・アンビシャス)
クラーク博士の銅像はどこにあるでしょうか?

君たちがこれからの日本を発展させていく人になるのです。
省エネ関連産業は成長分野となっています。興味を持った人は、この分野をお仕事にする夢と希望を持ち、勉強に励んでいこうと目標を持てるようになるので、勉強にも励んでいけると思います。
地球を救う人になろう!

グリーン成長戦略(概要)

普段からできる社会課題についても、今から、実践していきましょうね!
あと、世界に目を向けるには、英語も勉強しましょうね。

余談

ハットおじさんの家の手作りDIYのハットの蔵(物置)の上には、太陽光発電パネルもDIYで設置しています。実験用なので2枚で100W程度ですが、発電は天気が良く太陽光があるときしか発電できません。

そこで、リチウムイオンバッテリーに蓄電しています。発電した電気を貯めています。容量はBMS(バッテリー・マネジメント・システム)内蔵の200Ahです。貯めた電気は家庭用コンセントの100Vに変換して防犯ライトや防犯カメラの電源にしています。

発電状況は通信でスマホで確認できます。カメラの映像や録画も通信でスマホで確認できます。このように通信でつながっていることをIoTといいます。先ほどもでてきましたね。

お気軽にお問い合わせください。090-1050-5159受付時間 9:00-17:30 [ 土・日・祝日除く ]

お問合わせ